中高年以降の女性に多く見られる疾患の1つが変形性股関節症です。
医療機関で変形性股関節症と診断された方の中には、手術をしないと治らないと言われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、変形性股関節症と診断された方の多くに仙腸関節障害が見られます。
手術は最後の手段に取っておき、まずは保存療法での改善を図ることがおすすめです。
本記事では変形性股関節症の症状や原因、および治療法などについて解説します。
Contents
変形性股関節症とは
変形性股関節症は股関節に見られる変形性の病気で、中高年以降の女性に特に多く見られます。
発症初期には運動をした後などに股関節まわりに痛みが生じる程度ですが、進行とともに日常の動作でも症状が出やすくなります。
股関節は肩関節と同じく、球関節と呼ばれる独特の形状が特徴です。
股関節は球状の大腿骨(太ももの骨)骨頭が骨盤にある寛骨臼にはまるような構造をしているため、他の関節に比べて可動範囲が広くなっています。
大腿骨骨頭と寛骨臼は軟骨で覆われていますが、何らかの原因により股関節に負担がかかり、軟骨がすり減ることで痛みを引き起こすと考えられています。
変形性股関節症の主な原因
変形性股関節症の主な原因としては以下の例が挙げられます。
- 生まれつきの股関節の形状
- 遺伝
- 大腿骨寛骨臼インピンジメント
- 肥満
- 加齢
- オーバーユース
- 重い物を持つ仕事など
変形性股関節症の主な原因について解説します。
生まれつきの股関節の形状
変形性股関節症の原因の1つが、生まれつきの股関節の形状です。
例えば大腿骨骨頭がはまり込むくぼみ(寛骨臼)が生まれつき浅い(寛骨臼形成不全)場合、変形性股関節症の発症リスクを高めることが分かっています。
遺伝
遺伝も変形性股関節症の原因の1つです。
変形性股関節症の原因の1つが臼蓋形成不全であることは前述の通りです。
理化学研究所によると、臼蓋形成不全をともなう変形性股関節症の原因遺伝子が第13番染色体長腕に存在することが分かっています。
大腿骨寛骨臼インピンジメント
変形性股関節症の原因としては、大腿骨寛骨臼インピンジメントも挙げられます。
臼蓋形成不全の場合とは反対に骨盤側のくぼみが大腿骨骨頭を覆う範囲が広いと、股関節や運動における繰り返しの衝突(インピンジメント)によって関節唇(かんせつしん)が損傷されて痛みを生じやすくなります。
また、股関節を動かす際に骨盤や腰椎(腰の骨)が連動しない方の場合、大腿骨寛骨臼インピンジメントを引き起こしやすくなります。
肥満
肥満も変形性股関節症の原因の1つです。
体重が増加するとその分だけ股関節にかかる負荷が大きくなるため、動作にともない関節まわりの損傷を起こしやすくなります。
日本整形外科学会と日本股関節学会が監修するガイドラインにも、欧米では肥満が変形性股関節症の危険因子となる旨が記載されています。
ただし、日本国内では変形性股関節症と肥満に関するエビデンスをともなう報告が現在のところはありません。
加齢
加齢も変形性股関節症の原因の1つです。
変形性股関節症の多くは、もともと臼蓋形成不全などを持っていることが原因で発症する例が多くなっています。
しかし、原因となる疾患がない方でも、加齢による軟骨の摩耗などがきっかけで、変形性股関節症を発症する可能性があります。
オーバーユース
変形性股関節症の原因としては、オーバーユース(使い過ぎ)も挙げられます。
股関節を大きく動かすスポーツを繰り返すと、関節唇にダメージが加わるため変形性股関節症の発症リスクが高くなります。
臼蓋形成不全のケースとは異なり、オーバーユースによって変形性股関節症を発症した場合、寛骨臼の形状自体には異常が見られません。
重い物を持つ仕事など
重い物を持つ仕事なども変形性股関節症を発症する原因の1つです。
先のガイドラインでも重量物作業が変形性股関節症のリスクを高めると明記されています。
また、週に1度以上重量物を持ち上げる作業をする方は、デスクワーカーに比べて変形性股関節症の発症率が高いとされています。
変形性股関節症の症状
変形性股関節症は画像検査による所見で、以下の4つの時期に分類されています。
- 前期
- 初期
- 進行期
- 末期
時期ごとの股関節の状態や、主な症状について詳しく見ていきましょう。
前期
変形性股関節症の前期には臼蓋形成不全が認められるものの、大腿骨骨頭と寛骨臼の隙間は正常に保たれており、軟骨のすり減りも見られません。
この段階では無症状であることが一般的ですが、人によっては運動後の疲労や足のだるさを感じる場合もあります。
ただし、痛みが出始めるとおよそ3割の方が、10年以内に次の初期段階に移行するとされています。
【参考】変形性股関節症の進行度は?
初期
変形性股関節症の初期になると、大腿骨骨頭と寛骨臼の間が徐々に狭くなり始めます。
また、大腿骨骨頭や寛骨臼を覆う軟骨がすり減ることで股関節やお尻まわり、太ももの違和感や痛みを訴えはじめます。
およそ9割の方が5年以内に次の進行期へ移行するとされます。
【参考】変形性股関節症の進行度は?
進行期
変形性股関節症が進行期に入ると、軟骨がすり減り大腿骨骨頭と寛骨臼の隙間が明らかに狭くなります。
進行期には歩くときや動作の開始時などに痛みが出やすくなります。
また、しゃがむ動作が困難になる点も進行期の特徴です。
末期
変形性股関節症の症状が末期に至ると、大腿骨骨頭と寛骨臼との隙間がほとんど消失します。
寝ている間も痛むなど日常生活にも支障を来すようになるため、手術が必要となる場合も少なくありません。
変形性股関節症の治し方や治療法について
変形性股関節症の主な治し方や治療法は以下の通りです。
- 薬物療法
- 運動療法
- 生活習慣の改善
- 再生医療
- 手術療法
- 整体・手技療法
変形性股関節症の治し方や治療法の特徴について見ていきましょう。
薬物療法
変形性股関節症の治療法の1つが薬物療法です。
痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬を用いて症状を軽減することが一般的です。
夜も眠れないほどの痛みがある場合には、ボルタレンなどの座薬を利用するケースもあります。
運動療法
変形性股関節症を発症した場合には、症状の進行を遅らせるための運動療法もおこなわれます。
仮に手術が必要な変形性股関節症であっても、運動療法を並行しておこなうことが重要です。
主な運動療法としては筋力トレーニングや股関節のストレッチなどが挙げられます。
変形性股関節症を発症した場合におこなわれる代表的な筋力トレーニングは以下の4つです。
- プランク
- 足上げ運動
- 水中ウォーキング
- 椅子でのかかとの上げ下げ
プランク
プランクは体幹(全身から両手・両足を除いた部分)を鍛えるのにおすすめの筋力トレーニングです。
体幹を鍛えることで上半身が安定し、股関節にかかる負担を軽減する効果が期待できます。
プランクの手順は以下の通りです。
- 布団やヨガマットにうつ伏せで寝る
- 両ひじから先を床につけ、腕立て伏せをするように身体を起こす
- 30秒姿勢を保ったら元に戻す
②のときに腰が反らないよう気を付けましょう。
足上げ運動
足上げ運動は大腿四頭筋(太ももの前側にある大きな筋肉群)を鍛えるのにおすすめの筋力トレーニングです。
大腿四頭筋を鍛えることで下半身が安定し、股関節への負担を軽減する効果が期待できます。
足上げ運動は以下の手順で行いましょう。
- 布団やヨガマットにあおむけで寝る
- 右ひざを90度に曲げて立てる
- 左足を伸ばしたまま上げられる場所まであげる
- 10秒キープしたら元に戻す
- 反対側も同様におこなう(10回×3セット)
水中ウォーキング
水中ウォーキングも変形性股関節症の進行を遅らせる際に効果的な運動療法の1つです。
水中では負荷がはたらくため、関節に負担を掛けずに筋力アップを図ることが可能です。
翌日に疲れを残さない程度におこなうことがポイントです。
椅子に座ってかかとの上げ下げ
変形性股関節症の進行を遅らせるためには、椅子に座ってかかとの上げ下げをおこなうこともおすすめです。
両足が床に付く高さのいすに座り、片足ずつかかとを浮かせて上げ下げをおこないましょう。
歩行時に痛みがある方でもできるため、少しずつでも改善に取り組みましょう。
生活習慣の改善
変形性股関節症を発症した場合、生活習慣を改善するように指導されることが一般的です。
例えば床に座る生活は股関節に大きな負担を掛けるため、椅子に座るよう指導されることがあります。
また、股関節への負担を減らすための歩き方や靴の選び方に関するアドバイスなどもおこなわれます。
再生医療
近年になり変形性股関節症に対しても、PRP(多血小板血漿)療法や、ASC(脂肪由来幹細胞)治療などがおこなわれるようになっています。
PRP療法はプロの野球選手やゴルファーなどがケガからの回復目的でおこなったため知られるようになりました。
自分の血液から採取した多血小板血漿を患部に注射することで、消炎・鎮痛効果が期待できます。
ASC治療は自分の脂肪細胞から培養した幹細胞を患部に注射し、痛みや炎症を抑える治療法です。
いずれも副作用のリスクが低いというメリットがありますが、保険診療外のため高額であるといったデメリットもあります。
手術療法
上記の治療で効果が得られない場合や、日常生活に多大な支障を来す場合には手術療法が検討されます。
変形性股関節症の主な手術療法としては、人工関節置換術や股関節鏡手術、骨きり術などがあげられます。
整体・手技療法
一般的に整体・手技療法の施術法としては、現状より進行させないように股関節周囲の筋肉に対してのエクササイズの指導、鎮痛目的として股関節に関与する骨盤周囲の筋肉の緊張をほぐすマッサージを施すことが多いです。
特に硬くなってしまう動作方向として屈曲動作、外旋動作に対してストレッチを行い改善を図ることも行われます。
他にもハイボルト治療(高圧の電気刺激を利用した治療法)などで、患部に通電させ鎮痛を狙う治療法を行うケースもあります。
多くの整体院・接骨院では一度変形してしまった股関節に対しては、機能改善を図ると言うよりは現状より進行させないような対処方法で行われるのが多く見受けられます。
活法・妙見活法による治療法
活法は日本古来の手技療法です。
その中でも妙見活法は1000年以上に渡り研究・研鑽されてきた歴史があります。
妙見活法には「痛みの部位を直接ターゲットとしない」と言う特徴があります。
それはその痛みを生じさせている原因がその部位の問題ではなく、身体全体の連結・連動の不調と捉えているからです。
それを是正するには身体の機能を統合させるために身体全体を一纏まりに統制する必要があります。
妙見活法ではその手法は無数にありますので、その時その場面その患者さんの状況に応じて術者がフレキシブルに対応していきます。
術者の個性が反映されますので無駄のない効果的な治療が実現できます。
妙見活法による治療事例
40代女性 兵庫県神戸市 こうだ治療院
主訴
- 3年前より歩行時の痛み
- 跛行あり
- 睡眠中も痛みのため2時間で目を覚ます
施術
1回目:痛みでギリギリの状況と捉え、狭間に入り込む五大真空療法を施す。3年来痛みが初めて無くなったと喜ばれる。
2回目:前回の治療で3年ぶりに朝までぐっすり寝られてと報告を受ける。歩いても痛みが出なくなった。再度五大真空療法を施すと、歩幅が広がる。
3回目:「一日中外で歩いても痛みが出ない」と喜んで来院される。若干の跛行が見受けられたため身体の同調のリズムを作り上げる三光天位之活を施して終了。
治療院アクセス
- こうだ治療院
- 住所:〒650-0001 兵庫県神戸市中央区加納町4-10-20 サンライズビル2F
- TEL:078-393-5825
変形性股関節症の治療改善例については、以下でも纏めておりますので、ご参照ください。
変形性股関節症は手術をしないと治らない?
一口に変形性股関節症といっても、進行度により症状は様々です。
前期や初期に適切な対策を講じることで、手術のリスクを下げる可能性はあるといえるでしょう。
手術を避けるために意識したい6つのこと
変形性股関節症の手術を避けたいのであれば、症状が軽度のうちに以下6つのことをおこないましょう。
- 骨盤を起こすよう意識する
- 減量に取り組む
- かがむ回数を減らす
- 手すりを設置する
- 中殿筋を鍛える
- 痛みの出ない範囲でストレッチをおこなう
変形性股関節症の手術を避けるための工夫について解説します。
骨盤を起こすよう意識する
変形性股関節症の進行を抑え、手術を避けるためには、普段から骨盤を起こすよう意識することが重要です。
反り腰や猫背により骨盤が前後に傾くと、股関節への負担が増すため症状の悪化を招きやすくなります。
頭に付けたヒモを上から引っ張られるイメージで、上半身をまっすぐ伸ばすよう心がけましょう。
減量に取り組む
変形性股関節症の進行を抑え、手術を避けるためには、減量に取り組むことも重要です。
体重が増えると股関節への負担が増加し、さらに身体を動かしづらくなるといった悪循環に陥る可能性が高くなります。
変形性股関節症の症状が軽いうちに体重を減らし、股関節への負担を軽減するよう意識しましょう。
まずは現在の体重よりも2%の減量を目指し、可能であれば5%減量することがおすすめです。
かがむ回数を減らす
日常的にかがむ回数を減らすことも、股関節への負担を軽減し、手術のリスクを下げる結果につながります。
畳で生活をしているとどうしてもかがむ回数が増えるため、机と椅子の様式の生活に替えることがおすすめです。
家の中に手すりを設置する
変形性股関節症の進行を抑え、手術を避けるためには、家の中に手すりを設置することもおすすめです。
階段や浴室などに手すりを設置することで、股関節への負担を軽減する効果が期待できます。
中殿筋を鍛える
中殿筋を鍛えることも股関節への負担を軽減し、手術のリスクを下げる結果につながります。
中殿筋が弱くなると歩行時に十分に骨盤を支えられなくなるため、股関節への負荷が増大します。
無理のない範囲で中殿筋を鍛え、骨盤の安定化に取り組みましょう。
中殿筋を鍛える簡単は方法は以下の通りです。
- ベッドやヨガマットに横向きで寝る
- 上になった方の足を3秒かけてまっすぐ上にあげる
- 30㎝~40㎝ほどあげたら5秒間静止する
- 6秒かけて元の姿勢に戻す
- 反対側も同様におこなう(10回×1セット)
足を上げるときよりも、下ろすときに時間をかける点がポイントです。
痛みの出ない範囲でストレッチをおこなう
変形性股関節症の進行を抑え、手術を避けるためには、痛みの出ない範囲でストレッチをおこなうことも重要です。
筋肉は骨と骨とを結んでいるため、筋緊張が生じると骨が引っ張られて痛みを生じやすくなるためです。
変形性股関節症がある場合のストレッチは次の手順でおこないましょう。
- 両足を床につけて椅子に座る
- 右足の外くるぶしをあぐらをかくように左のひざに乗せる
- 左手で右の足首を、右手でひざを持つ
- 上半身を前に倒し右の股関節を気持ちよくストレッチする
- 30秒たったら反対側も同様におこなう
※上記4のときに猫背にならないよう、真っすぐ上半身を倒すよう意識しましょう。
仙腸関節障害の場合は手術をしないで改善するケースも
股関節の痛みが仙腸関節障害により起こっている場合、手術をしないで改善するケースもあります。
実は、股関節の痛みを訴えられる方の多くに、仙腸関節の可動域減少が見られます。
仙腸関節の可動域減少により股関節痛が生じている場合、手術をしても症状の改善は期待できません。
お風呂で温まったり、ストレッチをしたりして症状が軽減する場合、股関節の変形が傷みの原因でない可能性もあります。
手術は最後の手段に取っておき、まずは専門家による仙腸関節調整を受けることがおすすめです。
日常生活に支障を来す場合には手術も検討
セルフケアや仙腸関節調整では症状の改善が見られず、日常生活に支障を来す場合には手術も視野に入れる必要があります。
ただし、手術をした場合であっても、並行して運動療法に取り組むことが重要です。
手術後に運動療法をおこなわない場合、治療効果が半減する可能性もあるため注意が必要です。
変形性股関節症で手術を検討する目安は以下の4点です。
- 症状の程度
- 関節の変形度合
- 年齢
- 健康状態
変形性股関節症で手術を検討する目安の1つが症状の程度です。
痛みで歩くことが困難な場合はもちろん、睡眠がまともにとれない場合も手術が検討されます。
関節の変形が進みすぎており、運動療法などで改善が見込めない場合も手術対象です。
ただし、高齢の場合は手術にともなうリスクが大きくなるため、代替手段がないか慎重に判断しなければなりません。
また、変形性股関節症の手術は全身麻酔下でおこなわれるため、患者の健康状態によっては手術ができない可能性もあります。
症状に応じた対処で手術のリスクを下げましょう
変形性股関節症の症状は、徐々に進行することが一般的です。
前期や初期に適切な対処をおこなうと、手術のリスクを下げることが期待できます。
仮に仙腸関節障害により股関節痛が出ている場合には、手術をしても症状の改善が期待できません。
まずは本文で紹介したストレッチや筋トレに取り組み、可能な限り手術を避けることがおすすめです。
セルフケアでは改善が期待できないようであれば、専門医まで相談するようにしましょう。
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