手をよく使う仕事の方に多く見られる腱鞘炎ですが、小指側に痛みが出るケースもあることをご存じでしょうか。
小指側に痛みが出る場合、腱鞘炎以外の病気の可能性も疑われるため鑑別が重要です。
本記事では、手首の小指側に痛みが出る腱鞘炎の原因や治し方、およびその他の病気の可能性について解説します。
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手首の小指側に痛みが出るECU腱鞘炎について
腱鞘炎と聞いた方のなかには、親指側に痛みが出るドケルバン病をイメージされる方もいるかもしれません。
ここでは、小指側に痛みが出るECU腱鞘炎について解説します。
ECU腱鞘炎とは
ECUは英語の「extensor carpi ulnalis」を略したもので、日本語では尺側手根伸筋のことです。
尺側手根伸筋は前腕の外側を走行する筋肉で、手首を反らしたり小指側に曲げたりする働きがあります。
筋肉は腱に移行して骨に付着しますが、手は特によく使う箇所のため腱鞘と呼ばれるトンネルで保護されています。
ところが、何らかの原因によって腱が腫れたり、腱鞘が肥厚したりすると、腱と腱鞘とが擦れあって腱鞘炎の発症リスクが増加するのです。
手首には腱が通過するトンネル(腱鞘)が6つ並んでいますが、6つ目のトンネルに尺側手根伸筋腱が通っています。
6つ目のトンネルが肥厚したり、尺側手根伸筋腱が腫れたりすると、ECU腱鞘炎の発症リスクが増加します。
ECU腱鞘炎はあまり耳なじみがない症例ですが、実は親指側に見られるドケルバン病に次いで2番目に多い腱鞘炎です。
ECUの診断方法としては「合掌回外テスト」や「ECUシナジーテスト」の徒手検査法に加え、超音波などの画像診断を行う場合があります。
ECU腱鞘炎の原因
ECU腱鞘炎の1つが、尺側手根伸筋の使い過ぎです。
テニスのバックハンドの際に手首を反らす動作を繰り返すと、尺側手根伸筋腱と腱鞘とが擦れあってECU腱鞘炎を発症するリスクが増加します。
また、転倒して手を地面に強く着いたり、フライパンを何度もあおったりするような動作でECU腱鞘炎を発症するケースもあります。
手首の小指側に痛みが出る腱鞘炎の治し方
手首の小指側に痛みがあり、腱鞘炎と診断された場合には、次のような治療や施術で改善を図ることが一般的です。
- 安静・固定
- 薬物療法
- ステロイド注射
- 手術療法
手首の小指側に痛みが出る腱鞘炎の治し方について詳しく見ていきましょう。
安静・固定
手首の小指側に痛みが出るECU腱鞘炎の発症が疑われる場合には、まず安静にすることが求められます。
また、手首の可動範囲を制限するために装具で固定するケースもあります。
安静や固定により症状が緩和してきたら、理学療法士の指導下で少しずつ運動療法を開始するのが一般的です。
薬物療法
ECU腱鞘炎による痛みがある場合には、非ステロイド性消炎鎮痛剤の内服や外用で緩和を図ります。
ただし、内服タイプの非ステロイド性消炎鎮痛剤は胃腸障害を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
ステロイド注射
ECU腱鞘炎による痛みが強い場合には、ステロイド注射を行うケースがあります。
ステロイド注射は痛みの緩和に強い効果を発揮しますが、何度も繰り返すと腱の強度が低下し、断裂を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
手術療法
上記の治療で改善が見られない場合や、日常生活に支障を来す場合、手術療法が検討されることもあります。
肥厚した腱鞘を切開することで腱との摩擦を取り除きますが、通常の腱鞘炎とは異なり、腱鞘を切開するだけでは腱の脱臼が起こります。
そのため、ECU腱鞘炎の手術を行う際には、腱鞘形成術も並行して行うのが一般的です。
活法・妙見活法による治療法
妙見活法は日本古武道の桓武月辰流柔術に伝承される手技療法です。
ECU腱鞘炎などの痛みがピンポイントで発生する症例にも速やかに対応できる技術を継承しています。
特定の動作で痛みを感じるのはその動作(作用)に対して抵抗(反作用)が強すぎる状態です。
妙見活法整体では痛みの原因となる抵抗を無くすための、螺旋の形象を利用した独特な操作法があります。(三光一之活)
この操作法は痛みの原因となる動作の抵抗値を限りなく「0」にして負荷を分散させる効果があります。
動き出しの抵抗が無くなることで各細胞の周波数が再構築され痛みが消失するのです。
治療事例~50代男性 千葉県習志野市 月辰会活法整体院~
手首の小指側に痛みが出る腱鞘炎以外の疾患
手首の小指側に痛みが出る場合、ECU腱鞘炎以外にも以下2つの疾患の可能性が疑われます。
- TFCC損傷
- 尺骨突き上げ症候群
ここでは、手首の小指側に痛みが出る腱鞘炎以外の2つの疾患について解説します。
TFCC損傷
手首の小指側に痛みが出る腱鞘炎とよく間違われる疾患がTFCC損傷です。
TFCCは英語の「Triangular Fibro Cartilage Complex」を略したもので、日本語にすると三角繊維軟骨複合体を意味します。
三角繊維軟骨複合体は手首にある橈骨や尺骨、手根骨の間にある靭帯や軟骨など軟部組織の総称です。
三角繊維軟骨複合体には、手首を回す動作や小指側に倒す動作を行った際に、手首にかかる負担を吸収する働きがあります。
ところが、何らかの原因により三角繊維軟骨複合体が傷ついてしまうと、動作に伴って手首の外側に痛みを生じるようになります。
最初は手首を動かしたときに痛みが出る程度ですが、症状が進行すると安静にしていても痛みが出るようになるため注意が必要です。
TFCC損傷もテニスなどのスポーツや転倒時の衝撃で発症するケースが多く、症状もECU腱鞘炎と似通っているため間違って診察されるケースも少なくありません。
TFCCの診断方法としては「Fovea sign」や「手関節の尺側ストレステスト」の徒手検査法に加え、MRIなどの画像診断を行う場合があります。
尺骨突き上げ症候群
手首の小指側に痛みが出る腱鞘炎以外の疾患としては、尺骨突き上げ症候群も挙げられます。
尺骨突き上げ症候群は、手首の骨と前腕の骨がぶつかり合って炎症を起こすことで、手首の小指側に痛みを生じる点が特徴です。
手首を小指側に倒す動作が多い方に多く見られますが、生まれつき橈骨よりも尺骨の方が長いと言った理由で発症するケースもあります。
手首の小指側に痛みがある場合は専門家の診察を受けましょう
手首の外側に痛みがある場合はECU腱鞘炎やTFCC損傷、尺骨突き上げ症候群などの疾患が疑われます。
中でもECU腱鞘炎とTFCC損傷は発症原因だけでなく症状も似通っていることから、間違った診断を受けることも少なくありません。
また、尺骨突き上げ症候群はスポーツ中のケガや、転倒時に手をついたなど明らかな原因がなくても発症するケースがあります。
そのため、手首の小指側に痛みがある場合は、専門家の診察を受けることが重要です。
一般的には整形外科を受診しますが、治療を続けても症状が緩和しないようであれば、専門の外来を受診すると良いでしょう。
手首は日常的によく使う箇所のため、なるべく早期に適切な治療を受けることが早期改善への近道です。
病院に通うのが困難な方は、近くの整骨院・接骨院などで相談する方法もあります。
まとめ
腱鞘炎と言うと親指の付け根に見られるイメージもありますが、実際には小指側に発症するケースもあります。
特にECU腱鞘炎は親指側に見られるドケルバン病に次いで、2番目に多い腱鞘炎とされています。
手首は日常的によく動かす箇所なので、痛みがある場合はなるべく早めに専門家に見てもらい、適切な治療・施術を受けることが重要です。
腱鞘炎はスポーツ中のケガや転倒時の衝撃など、明らかな原因がなくても発症することがあるため、そのうち治るだろうと放置することは避けましょう。
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